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肝細胞がん:人種背景が異なる肝細胞がんゲノムの変異の全体像

Nature Genetics 46, 12 doi: 10.1038/ng.3126

さまざまな疫学的要因が、異なる集団における肝細胞がん(HCC)の有病率に関連している。 しかしこれまでHCCゲノムの遺伝的変化に影響を及ぼす疫学的背景および人種背景の全体像は十分には分かっていない。本論文では、人種背景が異なる集団に属する503例の肝細胞がんゲノムデータを収集することで、30個の候補ドライバー遺伝子と11個のコア経路モジュールを明らかにした。その上、2つの大規模がんゲノムプロジェクトとの共同研究として、608例の肝細胞がん症例のデータを用いて、人種背景が異なる集団間で体細胞変異塩基置換シグネチャーを比較解析し、主にアジア系患者のHCC症例に寄与する独特の変異シグネチャーを同定した。今回の研究により、肝細胞がん発がんにおいて、これまでに検索されていなかった人種背景に関連する変異過程が新たに解明された。TERTプロモーターのホットスポット変異、TERT遺伝子コピーの局所増幅あるいはTERT座位へのウイルスゲノム挿入のいずれかは、症例の68%以上に起こっていることから、TERTは、人種背景とは独立した肝細胞がん発生の中心点であることが示唆される。代謝酵素やクロマチンリモデリング因子をコードする遺伝子の異常が新しく同定されたこと、ならびに、高い割合でmTOR経路を活性化する遺伝子異常が見られたことは、今後HCCの治療や診断に結び付く機会となる可能性がある。

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