Analysis

APOBEC:APOBECシチジンデアミナーゼによる変異誘発パターンがヒトがんに広く見ら

Nature Genetics 45, 9 doi: 10.1038/ng.2702

最近の研究から、APOBECシチジンデアミナーゼ(RNA編集や、レトロウイルス抑制あるいはレトロトランスポゾン抑制の過程で、シトシンをウラシルに変換する酵素)のサブクラスが、ヒト腫瘍においてクラスター化した変異を誘導する可能性が示されている。本論文では、APOBECが仲介する変異誘発が、がんゲノム全体にわたって広く起こっていること、また、APOBEC mRNAレベルと相関することを示す。APOBECによる変異パターンを示す基準を厳密に設定し、その基準で調べたところ、全ゲノムおよびエキソームのデータセットに見られる変異クラスターはそれに合致していた。この基準を14種類のがんの2,680のエキソームにおける954,247個の変異〔この大部分のデータはがんゲノムアトラス(TCGA)から得られた〕に適用すると、膀胱がん、子宮頸がん、乳がん、頭頸部がんおよび肺がんにおいて、APOBECによる変異パターンが有意に多く存在することが示され、ある試料では全変異の68%に達した。乳がんでは、HER2陽性サブタイプに、APOBECによる変異パターンを持つ腫瘍が明らかに多く見られたことから、このタイプの変異誘発ががんの発生の仕組みに関連することが示唆された。また、APOBECによる変異パターンはがん関連遺伝子にも広く見られることから、APOBECが仲介するユビキタスな変異誘発ががんを誘発すると考えられる。

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