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腎細胞がん:淡明細胞型腎細胞がんの統合的分子解析

Nature Genetics 45, 8 doi: 10.1038/ng.2699

淡明細胞型腎細胞がん(ccRCC)は腎臓に生ずる最も頻度の高いがんであるが、その分子的な発症機序は完全には理解されていない。今回我々は、100例を超すccRCC症例について、全ゲノムないし全エキソーム塩基配列決定、RNA塩基配列決定、さらにマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析、ゲノム解析コピー数、メチル化解析を含む、ccRCCの統合的な分子研究を行った。一連の解析を通じて、ccRCCの遺伝学的変化の全体像の解明、遺伝子発現およびDNAメチル化プロファイルの解明を行うとともに、それらが腫瘍動態に与える影響を検討した。VHLを通じたタンパク質分解の異常は、ccRCCの一般的な特徴であるが、こうした異常は、VHLの不活性化だけでなく、TCEB1遺伝子に見いだされた新たなホットスポット変異によっても生ずることがわかった。このホットスポット変異は、Elongin CとVHLの結合を阻害することで、HIFの蓄積を引き起こす。この他にも、PI3K-AKT-mTORシグナル伝達、KEAP1-NRF2-CUL3装置、DNAメチル化、p53関連経路、mRNAプロセシングをはじめとして、ccRCCにおいて変異が頻発する経路とそれらの構成要素が新たに同定された。今回の統合的分子解析から、DNAメチル化、遺伝子変異や遺伝子発現、コピー数プロファイルの間の新しい相関関係が明らかになり、ccRCC患者の臨床的リスクの層別化が可能になった。

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