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口腔微生物:古い人骨の石灰化歯垢(プラーク)の塩基配列決定から、新石器時代および産業革命期に起こった食生活の変更に伴う口腔微生物叢の変化が明らかになった

Nature Genetics 45, 4 doi: 10.1038/ng.2536

ヒトの健康に対する常在微生物の存在の重要性は認識されつつあるが、ヒトの食生活や文化の大きな変化が常在微生物叢にどのような影響を与えるかは、依然としてほとんど知られていない。ヒトの進化過程において最も大きな食生活の変化のうち2つは、新石器時代(農耕の開始によって)炭水化物を豊富に摂取するようになったこと(約1万年前から)と、近代工業が発達して砂糖と小麦粉が簡便に入手できるようになったこと(1850年頃から)である。本論文では、古い人骨歯牙の石灰化歯垢(歯石)にこの時期の詳細な遺伝的記録が保持されていることを明らかにする。ヨーロッパ人の古い人骨34体から得られた配列データから、狩猟採集から農耕への移行によって口腔内の細菌叢が疾患に関連した構成へと変化したことが判明した。細菌叢の構成は、新石器時代から中世の間においては予想と異なって変化がなく、その後、おそらく産業革命期の間に(現在は常在である)齲蝕原性細菌(虫歯原因菌)が優勢を占めるようになった。現代人の口腔微生物叢のエコシステムは古い時代の集団に比べると多様性が低く、このことが、産業革命後の生活習慣における慢性口腔(そしてそれ以外の)疾患の一因となっている可能性がある

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