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髄質嚢胞腎:髄質嚢胞腎I型を発症させる変異は、大量並行塩基配列決定では見逃されたMUC1の長鎖VNTRに存在する

Nature Genetics 45, 3 doi: 10.1038/ng.2543

メンデル疾患の中には、全ゲノムもしくは全エキソームの大量並列シーケンサーによる塩基配列決定によって、その原因となる遺伝的変化を速やかに検出できる疾患もある。だが、すべての疾患においてこの方法が有効なわけではない。本論文では、単純なメンデル疾患である髄質嚢胞腎I型(MCKD1)の例について報告する。この疾患は、10年以上前に1番染色体の2Mb領域にマッピングされている。クローニング、キャピラリーシーケンサーによる塩基配列決定、de novoアセンブリを行うことで、この遺伝的変化が、MCKD1患者の6家系のいずれもが保有する、同等ではあるが別個に出現したと思われる配列変異であることが最終的に明らかになった。この遺伝的変化は、大量並行塩基配列決定データからは発見が特に困難であった。というのは変異が、ムチン1をコードする遺伝子MUC1のコード配列内のVNTR(反復数に多様性がみられる縦列反復配列)、すなわち、きわめて長い(およそ1.5~5 kb)、GCに富んだ(>80%)配列中に存在した、反復配列1個あたりにシトシン残基1個が挿入された変異(しかも、どの反復配列に挿入が生じるかは家系により異なる)だったからである。これらの結果は、複雑な疾患はもちろん、メンデル疾患であっても、その原因遺伝子を大量並行塩基配列決定により同定しようとする際の、注意喚起となると考えられる。

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