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がん:複数のヒトがんにおいて頻発するFAT1の体細胞変異はWnt活性化の異常を導く

Nature Genetics 45, 3 doi: 10.1038/ng.2538

Wntシグナルの異常により、がんが発生する。Wnt経路活性化の遺伝的基盤に関しては、多くの種類のがんにおいて完全には解明されていない。今回、膠芽腫(20.5%)、大腸がん(7.7%)、頭頸部がん(6.7%)において、キイロショウジョウバエのがん抑制関連遺伝子FAT1の体細胞変異が頻発することが見つかったので報告する。FAT1はカドヘリン様タンパク質であり、βカテニンと結合して核への移行を妨げることにより、がん細胞の増殖をin vitroおよびin vivoで強く抑制することがわかった。したがって、変異によるFAT1の不活化は、Wntシグナルと腫瘍化を促進し、患者の生存に影響を与える。これらのデータは、FAT1が、がんにおいてよくみられる染色体4q35領域にあるがん抑制遺伝子であることを強く示唆する。FAT1の機能喪失は、腫瘍発生においてよくみられる。これらのことはがんの生物学において2つの重大なことを示している。すなわち、大腸がん以外のがんにおけるWnt活性化の基盤と4q35領域のがん抑制遺伝子の同定である。

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