Analysis

全がん解析:各種のがんで共通する体細胞性コピー数変化のパターン

Nature Genetics 45, 10 doi: 10.1038/ng.2760

体細胞性コピー数変化(SCNA)によってどのようにがんが引き起こされるかを探ることは重要な目標である。このたび、がんゲノムアトラス(TCGA)で収集された全がんゲノムデータセットを用いて、4,934の各種がん症例におけるSCNAのパターンについて特性解析を行った。ゲノム全体の重複は37%のがん症例で観察された。全ゲノム重複が起こっている症例では、他の全てのSCNA、TP53変異、CCNE1のコピー数増大、PPP2R複合体の異常が高い割合で同時に生じていた。SCNAには、染色体内部に存在するものの方が、テロメアに隣接するものよりも短い断片である傾向が見られた。このことは、両者が生み出される過程の違いを示唆するものである。高頻度かつ局所的に出現するSCNAは140の領域で見つかった。そのうち102の領域では既知のがん遺伝子もしくは腫瘍遺伝子の標的を含まず、50の領域では機能的に有意な変異が生じた遺伝子を含んでいた。コピー数が増大した領域のうち既知のがん遺伝子が存在しない領域には、エピジェネティックな調節に関わる遺伝子が多く含まれていた。ゲノム損傷のレベルを評価するためにSCNAを含む2領域間の相互関係を調べたところ、その7%は逆の相互関係を示した。そしてこれらの領域は多くの場合、その産物であるタンパク質が物理的に相互作用し、類似した機能を持つと思われる遺伝子を含んでいた。上記の結果は、がん化の原因となるSCNAが、どのように生成され、機能を発揮するに至るかについての手がかりを与えるものである。

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