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腫瘍幹細胞:Dclk1によって腸のがん幹細胞と正常幹細胞が区別される

Nature Genetics 45, 1 doi: 10.1038/ng.2481

腫瘍幹細胞(TSC)が治療標的になる可能性には大きな関心が寄せられている。しかし、TSCを標的とするがん治療には限界がある。TSCマーカーは正常幹細胞(NSC)にも共有されることが多いという難点があり、このようなマーカーを標的とする治療は、正常組織に重大な損傷を引き起こしうるからである。TSC特異的である可能性のあるマーカーを同定するために、我々はdoublecortin-like kinase 1(Dclk1)に着目した。Dclk1は腸におけるNSCの候補マーカーであることが報告されたが、最近、分化細胞(例えば、Tuft細胞)のマーカーであることを示す報告がある。今回、細胞系譜追跡実験を用いて、Dclk1は腸におけるNSCのマーカーではないが、その代わり、ApcMin/+マウスのポリープにおいて継続的に腫瘍子孫細胞を産生するTSCのマーカーであることを示す。Dclk1陽性TSCを特異的に除去すると、正常な腸には明らかな損傷を与えることなく、ポリープの顕著な退縮が引き起こされた。我々のデータは、Dclk1陽性TSCを標的とする大腸がんの治療法開発の可能性を示唆している。

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