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マラリア:三日熱マラリア原虫は、熱帯熱マラリア原虫に比べて、大きな遺伝的多様性を示す

Nature Genetics 44, 9 doi: 10.1038/ng.2373

別々の生息域から単離された、三日熱マラリア原虫Plasmodium vivaxの4種類の株のゲノムについて塩基配列決定および注釈付けを行った。その結果、これまで十分ではなかった三日熱マラリア原虫ゲノムの解読塩基配列数が3倍になり、 この生物種の、地球規模の遺伝的多様性がゲノムワイドな視点から明らかになった。三日熱マラリア原虫では単離株ごとに検出されるSNPが異なるが、単離株間のSNP多様性は、致死性の高いマラリアを引き起こす熱帯熱マラリア原虫Plasmodium falciparumの単離株での場合に比べて、約2倍であることが明らかになった。ここで後者は、前者とのデータ比較が可能な生息域から単離された株である。このことは、最近になって個体数にボトルネックを生じたと考えられる熱帯熱マラリア原虫との比較において、三日熱マラリア原虫の世界規模での発生定着が異なる経過をたどったか、もしくはそれほど大きな変化がなかったかの両方、またはいずれかであることを示している。このようなSNPの多様性は、マイクロサテライトや遺伝子ファミリーにみられる多様性とともに、三日熱マラリア原虫においては、世界全体で機能的な多様性が観察される可能性を示唆している。上記の結果は、三日熱マラリア原虫の遺伝子変異を詳細に明らかにすることで、これまであまり研究が進んではいないが重要度の高い、この病原体の生物学的な特性を標的とした治療的介入が可能になることを裏付けるものである。

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