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微生物ゲノム:ゲノムおよびトランスクリプトームの解析で明らかにされる植物病原性真菌Colletotrichumの生活様式の変化

Nature Genetics 44, 9 doi: 10.1038/ng.2372

Colletotrichum種は、世界中の農作物に大きな損害を与える真菌病原体である。宿主感染には、侵入、生きている宿主細胞の内部での増殖(バイオトロフィー)、および組織の破壊(ネクロトロフィー)と関連する特殊化した種類の細胞の分化が必要である。本論文では、シロイヌナズナに感染したColletotrichum higginsianum、およびトウモロコシに感染したColletotrichum graminicolaのゲノムおよびトランスクリプトームの分析結果を示す。比較ゲノミクスにより、この2種の真菌は多数の病原性関連遺伝子群を持つが、分泌エフェクター、ペクチン分解酵素、二次代謝酵素、輸送体、ペプチダーゼをコードする遺伝子のファミリーに関しては、C. higginsianumの方が多いことが明らかにされた。全ゲノム発現プロファイル解析では、こうした遺伝子が病原性の変化に伴って連続的な波のように転写されることがわかり、エフェクターおよび二次代謝酵素は侵入前およびバイオトロフィー時に誘導されるのに対し、多くの加水分解酵素および輸送体はそれ以降、ネクロトロフィーへの切り替え時に上方制御されていた。今回の知見は、植物由来シグナルの侵入前感知によって真菌の遺伝子発現が大幅に再編成されていることを明らかにするとともに、特定の種類の真菌細胞に関するこれまで知られていなかった機能を指摘している。

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