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FAN1変異は核巨大化間質性腎炎を引き起こすことにより、慢性腎臓病とDNA損傷修復の欠損とを関連づける

Nature Genetics 44, 8 doi: 10.1038/ng.2347

慢性腎臓病(CKD)は、健康的な生活に支障をきたす重要な疾患の1つである。腎の繊維化を端的に特徴づける機序については、まだ十分に明らかにされていない。本論文では、エキソーム塩基配列決定を行い、腎繊維化のモデル疾患となる核巨大化間質性腎炎(karyomegalic interstitial nephritis:KIN)の発症素因として、FAN1に生じた変異を同定した。KINの腎臓組織像は、核が巨大化していること以外は、ネフロン癆のものとほぼ同じである。FAN1タンパク質はヌクレアーゼ活性を示し、ファンコニ貧血のDNA損傷に対する応答(DDR)経路において、DNAの鎖間架橋(interstrand cross-link:ICL)を修復する過程に携わっている。FAN1に変異が生じている人の細胞は、ICL形成促進薬であるマイトマイシンCに対して感受性を示したが、ジエポキシブタンで処理した場合には、ファンコニ貧血症の患者由来の細胞とは異なり、染色体切断や細胞周期停止を起こさなかった。FAN1変異型細胞が示すICL形成促進薬に対する応答性は、当該細胞内で野生型FAN1を発現させた場合には減少したが、KIN患者から得られた各種の変異を保持するcDNAを発現させても変化しなかった。fan1をノックダウンしたゼブラフィッシュでは、DDRの活性化およびアポトーシスの亢進、腎嚢胞形成が観察された。今回得られた知見は、環境遺伝子毒性物質の影響を受けたり、DNA修復が不十分であったりすることが、腎臓の繊維化およびCKDの発症に寄与しているという、これまでにない機序を指摘するものである。

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