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巨脳症:PI3K-AKT3-mTOR経路の構成因子に生じたde novo体細胞変異は片側性巨脳症を引き起こす

Nature Genetics 44, 8 doi: 10.1038/ng.2329

限られた特定の領域におけるde novo体細胞変異は、腫瘍形成などの疾患においてかねてより観察されているが、発達過程にある脳の形成異常から報告されることはまれである。片側性巨脳症(hemimegalencephaly:HME)は片側の大脳半球の肥大を特徴とする。HME発症についての分子レベルの病因は不明なままである。HMEを伴う難治性てんかんの場合には半球切除術と呼ばれる外科的治療が適応可能であり、この際に、病変組織の標本を採取できる。本論文では、HME患者20人の脳標本および血液標本を用いて、エキソーム塩基配列解析と、質量分析計による配列確認を行い、罹患者の30%において、PIK3CAAKT3MTORの遺伝子にde novo体細胞変異を同定した。そのうちPIK3CA c.1633G > Aは頻発する変異であり、4人の患者で同定された。これらの変異は、脳のさまざまな領域の病変標本に対して配列決定を行ったところ、8〜40%の割合で見つかった。また、変異が検出された患者の脳では、神経細胞のS6タンパク質のリン酸化が高進していた。S6リン酸化の高進は、mTOR(mammalian target of rapamycin)シグナル伝達経路の異常な活性化を意味している。以上の結果から、HMEは、遺伝子モザイクが観察される、PI3K-AKT3-mTORシグナル伝達経路における機能獲得変異を原因とする疾患であると考えられる。

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