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老化とがん:検出可能なクローン性モザイクと、老化およびがんとの関連性

Nature Genetics 44, 6 doi: 10.1038/ng.2270

13のゲノムワイド関連解析から抽出した、がんに罹患している31,717人と、がんに罹患していない対照26,136人を詳細に調べたところ、その血液試料もしくは口腔(頬)細胞試料から得られたDNAクローンの一部に大規模な染色体異常を見つけた。すなわち、このうち517人(0.89%)の常染色体において、2Mbを超える大きさの、染色体異数性、もしくはコピー数変化を伴わないヘテロ接合性喪失のモザイク性染色体異常を検出した。このとき、このモザイク性の染色体異常を有する細胞の割合は7〜95%であった。ここで、がんに罹患していない場合には、異常細胞の割合は、50歳未満では0.23%であるが、75歳から79歳では1.91%であるというように、年齢が上がるにつれて増大した(P=4.8×10–8)。また、診断前あるいは治療前のがん症例由来のDNAを調べたところ、固形がん罹患者にモザイク性の染色体異常が高頻度に見られ(0.97%、がんに罹患していない場合には0.74%、OR=1.25、P=0.016)、この異常と固形がんの確定診断に強い関連が見られた(OR=1.45、P=0.0005)。このような検出可能なモザイク性はまた、確定診断から少なくとも1年以上以前にDNA試料を採取された白血病罹患者においても、がんに罹患していない場合と比して、高頻度で観察された(OR=35.4、P=3.8×10–11)。上記の結果は、がん、ならびにがん以外の高齢発症型疾患の原因となる、体細胞で起こる現象が、時間の経過とともに進行していくことを明確に示すものである。

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