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脳症:コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)遺伝子変異により球状体形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症が起きる

Nature Genetics 44, 2 doi: 10.1038/ng.1027

球状体形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)は、常染色体優性遺伝形式の中枢神経の白質病であり、人格変化、行動変化、認知症、うつ、パーキンソン症状、けいれんなどの多様な臨床症状を示す。ゲノムワイドな連鎖解析とエキソーム塩基配列決定を統合することにより、14のHDLS家系において、コロニー刺激因子1受容体(CSF1Rによってコードされる)のチロシンキナーゼドメインに影響を与える14の異なった変異を同定した。
1家系において、新規の変異出現を確認した。さらに塩基配列決定を行ったところ、皮質基底核症候群と診断された患者でもさらにCSF1Rの変異が見つかった。実験によりCSF-1の刺激で野生型ではキナーゼのチロシン残基が選択的に急速に自動リン酸化されるが、変異CSF1Rではリン酸化が起こらず、CSF1Rの機能の一部欠失によりHDLSが生じることが示唆された。CSF1Rは脳におけるミクログリアの増殖と分化に必須の分子であるので、HDLSの病態にミクログリアの機能不全が重要な役割を果たしていることが今回の結果から示唆された。

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