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薬剤耐性菌:結核菌のリファンピシン耐性株の全ゲノム
塩基配列決定によりRNAポリメラーゼ遺伝子中に補償的な変異が同定された

Nature Genetics 44, 1 doi: 10.1038/ng.1038

薬剤耐性菌の流行は全世界に拡大している。しばしば、薬剤感受性菌と比べて耐性菌の適応度が低い場合でさえも、そうである。モデルシステムのデータからは抗菌剤耐性の適応度のコストは欠陥を補うような変異により削減されうることが示唆される、しかし、ヒトの集団中で補償的な(欠陥を補うような)進化が、薬剤耐性菌が成功するのに何らかの重要な役割を果たしているという証拠は、これまできわめて限られたものしか得られていない。今回、ヒト結核(TB)の病因となる結核菌M. tuberculosisで、リファンピシン耐性のRNAポリメラーゼ遺伝子中に一連の補償的な変異が観察された。これらの補償的な変異をもった結核菌株はin vitroで高い競争力を持っている。その上これらの変異は、患者集団を通じて病院での相対的な出現頻度を調査してわかったようにin vivoでも高い適応度と関連していた。注目すべきは世界で最も高頻度の多剤耐性(MDR)TBを発症する国では、病院で単離されたMDRの30%以上がこういう型の変異をもっていたことである。この発見は、MDR TBの世界的な流行における、補償的な進化の役割を支持するものである。

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