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幹細胞とクロマチン:幹細胞分化におけるJNKによるクロマチン修飾機能

Nature Genetics 44, 1 doi: 10.1038/ng.1036

シグナル伝達は細胞外からの刺激に対する細胞の応答を仲介している。c-JunのNH2末端キナーゼ(JNK)が関与する伝達経路は、分裂促進因子活性化タンパク質(MAP)キナーゼによる経路の1つで、すでに知られているストレス応答における機能のほかに、未知の機序によって分化にもかかわっている。まず、ゲノム全域におけるJNKの所在を調べたところ、幹細胞が神経細胞へ分化していく際に、多数の、一連の活性型プロモーターに結合していることがわかった。JNKが結合するプロモーターには、転写因子NF-Yの結合モチーフが多く含まれていたが、AP-1のモチーフは含まれていなかった。NF-Yはこれらの予測部位に結合し、ドミナントネガティブに働くNF-YAを過剰発現させるとクロマチンに結合するJNKの数が減少した。さらに、ヒストンH3の10番目のセリン(H3S10)がJNKの基質であること、そして、JNKが結合するプロモーターにおいてH3S10のリン酸化が選択的に起こっていることを見つけた。また、分裂後の神経細胞においてJNKによるシグナル伝達を阻害すると、H3S10のリン酸化および標的遺伝子の発現が減少した。以上の結果は、幹細胞の分化に際してMAPキナーゼが、今回新たに判明した標的遺伝子のクロマチンに結合し機能を及ぼすことを示すものである。

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