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薬剤耐性菌:薬剤の濃度を動的に維持した選択条件下での抗生物質耐性の進化の道筋

Nature Genetics 44, 1 doi: 10.1038/ng.1034

抗生物質耐性は複数の変異が連続的に蓄積してでき上がることがある。このような段階的な進化を研究するために細菌の生育を継続して観察し、薬剤の濃度を動的に調節し、進化しつつある集団が常に選択圧にさらされているような“モービドシュタット(定常的に不健全な状態を維持する)”選択装置を開発した。クロラムフェニコール、ドキシサイクリン、トリメトプリンといった単一の薬剤を選択する条件で、大腸菌の耐性の進化を解析した。およそ20日間にわたって、同じような表現型の推移を示す類似した集団で耐性のレベルは劇的に増大した。こうして生じた細菌株の全ゲノム塩基配列決定から、それぞれの薬剤に特異的に耐性を示す変異と複数の薬剤に耐性を示す変異の両方が同定された。クロラムフェニコールとドキシサイクリン耐性は、翻訳、転写、輸送に関する遺伝子のさまざまな組み合わせによる変異のなだらかな進化がみられた。それとは逆に、トリメトプリン耐性はジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードする遺伝子に限られた変異により段階的に生じてきていた。実験の過程を通して計時的にDHFR遺伝子の塩基配列決定を行うと、類似した集団で、同一の変異が生じ、それらが同じような順序で獲得されていることが示された。

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