Article

造血幹細胞とメチル化:Dnmt3aは造血幹細胞の分化に必須である

Nature Genetics 44, 1 doi: 10.1038/ng.1009

DNAを新規に(de novo)メチル化する酵素であるDnmt3aおよびDnmt3bが胚性幹細胞において失われると、分化の進行が妨げられる。ところが、これらの酵素の体性幹細胞における役割はほとんど知られていない。特定の条件下においてその機能が失われるように操作した実験を行ったところ、Dnmt3aが欠失すると、累代移植の際に造血幹細胞(HSC)の分化が次第に損なわれていくが、それと同時に骨髄中のHSC数が増えていくことが明らかになった。 Dnmt3aヌル変異HSCにおいては、ある特定の領域に高メチル化および低メチル化の両方が観察された。たとえば、CpG島の多くは高メチル化されていた。このDnmt3aヌル変異HSCでは、HSC多能性を担う遺伝子の発現が増加し、分化因子の発現が減少していた。そしてその子孫細胞では、メチル化の程度が全体的に低く、それと同時にHSC特異的遺伝子の発現抑制が完全ではなかった。上述の結果から、Dnmt3aが、HSC調節遺伝子のエピジェネティックな発現抑制にかかわる必須因子であり、それゆえに効率的な分化を可能にしていることが証明された。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度