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ミトコンドリア遺伝病:抗レトロウイルス治療法により、mtDNAの変異のクローン拡大が起こり、ミトコンドリアによる加齢が加速される

Nature Genetics 43, 8 doi: 10.1038/ng.863

HIVの感染の治療が成功した人々は早期に老化し、多臓器で進行性の病気になるという証拠が増え続けているが、その理由はわかっていない。本研究では、一般的に使われる抗レトロウイルス剤のヌクレオシドアナログにより治療を受けた患者では、体細胞ミトコンドリアDNA(mtDNA)の変異が急速に蓄積されており、通常の加齢によってずっと遅い時期に起こる障害とよく似ている様子を呈することを示す。合成法と一分子法を組み合わせた超高カバー率の塩基配列決定を行った結果、体細胞での変異の増大は、変異の誘発が
増えたからではなく、むしろmtDNAの回転が
加速された事によると示唆される。このことから加齢に関係する体細胞ミトコンドリアの既存の変異のクローン性増殖が引き起こされ、生化学的欠陥は細胞の10%にまで影響する可能性がある。
これらの観察から、加齢の過程には体細胞mtDNAの変異の役割が大きく影響し、新たに出現した医療によって引き起こされる、進行性のミトコンドリア遺伝病という分野が今後10年間にわたって増加することになるだろう。

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