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繊毛関連疾患:一次繊毛における細胞内輸送の制御を担う
遺伝子間の複雑な相互作用

Nature Genetics 43, 6 doi: 10.1038/ng.832

ヒトの遺伝性繊毛関連疾患においては、きわめて多岐にわたる組織・器官における異常が観察され、その複雑な遺伝継承の仕方についても多様性が観察される。DYNC2H1に生じた変異によって逆行性繊毛モーターが不活性化されると、症状にかなりの違いが見られる骨格形成異常が引き起こされる。本論文では、繊毛内輸送に必須である、Dync2h1とそのほかの遺伝子との間の遺伝子間相互作用を初めて明らかにする。Dync2h1に変異をもつマウスにおいては、繊毛構造は損なわれ、ソニックヘッジホッグシグナル伝達系が阻害され、妊娠中期における致死性が認められた。順行性の繊毛内輸送に必須の遺伝子Ift172がヘテロ接合性であれば、Dync2h1がホモ接合性である場合の繊毛構造の異常、ソニックヘッジホッグシグナル伝達系の欠損、早期の致死性が起こらなかった。Ift122Dync2h1と同様、逆行性繊毛内輸送に必要であるが、この遺伝子量の低下によってもDync2h1の表現型は観察されなくなる。これらの遺伝子間相互作用から、繊毛疾患の原因となる細胞生物学的な機序が明らかとなり、さらに、繊毛内輸送を担う遺伝子に生じた突然変異による表現型が、シグナル伝達系における直接的な役割というよりは繊毛構造における役割によるものであることが示された。

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