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旋毛虫のゲノム配列:寄生性の線虫Trichinella spiralis(旋毛虫)ゲノムの概要配列

Nature Genetics 43, 3 doi: 10.1038/ng.769

線虫門のゲノム進化の研究は、Caenorhabditis elegansとの比較に焦点を合わせたものに限られている。ヒトのもっともありふれた旋毛虫症の原因となり、動物から人に感染する食物由来の寄生虫Trichinella spiralisのゲノム概要配列を報告する。この寄生性の線虫は、線虫門の中でも初期に共通の祖先から分岐したクレード(生物群)の現存するメンバーの1つであり、古くからある遺伝子で線虫だけにみられる分子シグネチャー(特徴)を同定することができる。35倍のカバー率の全ゲノムショットガン法と階層別の遺伝子地図を使った塩基配列決定を用いて、核ゲノム64Mbを塩基配列決定し、そのゲノムに15,808個のタンパク質コード遺伝子が含まれることを見積もった。ゲノムの比較解析から、線虫門において染色体内での再編成がみられること、非寄生性線虫と比較して寄生性線虫においてはタンパク質ファミリーの消滅数がその誕生数に対して不均衡なほどに大きいこと、キイロショウジョウバエDrosophila melanogasterに比較して線虫門では遺伝子の獲得や損失が際立って多くみられることがわかった。このゲノム塩基配列と線虫門の特徴は、線虫類のゲノム進化の研究に役立つばかりでなく、世界中のヒトや食用動物、農作物に対する寄生虫を撲滅する上でも大いに役に立つであろう。

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