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病原菌の進化:複数の患者間で類似して起こる細菌の
進化から病気の原因となる遺伝子の候補が同定できる

Nature Genetics 43, 12 doi: 10.1038/ng.997

病原菌はヒトを宿主とした感染を通じて進化しているが、適応的な変異と中立的な変異の区別はまだ解明されていない問題である。ここでは、複数の個人に感染している同一の病原菌種に繰り返し起こる変異のパターンを追跡することから、適応的な進化にある細菌の遺伝子を同定した。嚢胞性繊維症の患者の間に起こったバークホルデリア・ドロサ菌の研究を再調査し、16年にわたる14人の個人から単離した112株のゲノムの塩基配列を決めた。その結果、17の細菌の遺伝子が複数の患者で非同義的な変異を獲得していることがわかり、類似した適応的な進化によることが示された。これらの遺伝子の変異では、抗生物質耐性や細菌膜組成を含む病原性にとって重要な表現型に影響があり、肺における感染にとっては最も重要となる酸素依存性の調節機能が示唆された。いくつかの遺伝子はこれまで病原性には含まれなかったもので、新しい治療法の標的となりうると考えられる。病原菌が複数の個体に広がるにつれて、類似の分子進化が同定されたことは、ヒトの宿主内でそれらが主要な選択圧となっていることを示している。

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