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ヘモグロビン症:赤血球の転写因子KLF1のハプロ不全は遺伝性高胎児ヘモグロビン症を引き起こす

Nature Genetics 42, 9 doi: 10.1038/ng.630

遺伝性高胎児ヘモグロビン症(HPFH)は出生後も胎児型ヘモグロビン(HbF)が高値を維持していることを特徴とする。疾患の原因となる素因は、遺伝的素因、環境的素因ともにいくつか同定されているが、大半は依然として明らかではない。マルタのある家系では、構成員27名のうち10名がHPFHを発症していた。この家系を対象にSNPをマーカーとしたゲノムワイド連鎖解析を行なったところ、19番染色体短腕(19p13.12-13)の領域に強い連鎖が見つかった。塩基配列決定の結果、KLF1にナンセンス変異であるp.K288Xが存在することが判明した。p.K288Xによって、赤血球の重要な転写調節因子であるKLF1のDNA結合ドメインが失われている。当該家系のうちHPFH患者だけがこのp.K288X変異のヘテロ接合性保因者であった。赤血球前駆細胞の初代培養細胞の発現プロファイルから、HPFH患者のサンプルではKLF1の標的遺伝子の発現が減少していることが明らかになった。KLF1の機能を調べたところ、すでに確認されている成体型グロビンの発現調節への関与に加えて、KLF1が、HbF発現に対する抑制因子をコードしているBCL11Aの重要な活性化因子であることが示唆された。以上の結果は、KLF1のハプロ不全がHbFの血中濃度に及ぼす効果についての論理的根拠となるものである。

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