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造血器疾患:骨髄性疾患で認められるヒストンメチルトランスフェラーゼ遺伝子EZH2の不活性化変異

Nature Genetics 42, 8 doi: 10.1038/ng.621

7番染色体長腕(7q)の異常は骨髄性の腫瘍で高頻度にみられるが、特定の標的遺伝子は現在のところまだ同定されていない。本論文では、7qに後天的な片親性ダイソミーを有する患者12人のうち9人において、EZH2のホモ接合性突然変異が認められたことを報告する。そして、計614人の骨髄性疾患の患者を対象にスクリーニングを行ったところ、42人の患者で、片方もしくは両方の対立遺伝子に存在するEZH2の変異が49種類見つかった。このような変異がもっとも高頻度で検出されたのは、骨髄異形成腫瘍/骨髄増殖性腫瘍の患者(219人のうち27人、12%)と、骨髄線維症の患者(30人のうち4人、13%)においてであった。EZH2は、ポリコーム遺伝子発現抑制複合体2(PRC2)の触媒サブユニットである、高度に保存されたヒストンH3Lys27(H3K27)メチルトランスフェラーゼをコードしている。EZH2は、細胞運命の決定にかかわる遺伝子群の発現をエピジェネティックに抑制することで、幹細胞の自己複製に影響を及ぼす。さらにEZH2は腫瘍形成(発がん)活性を示し、その高発現と、上皮性腫瘍における脱分化との因果関係がこれまでに明らかになっている。今回同定した変異によって、EZH2合成が中途で終結しており、ヒストンメチルトランスフェラーゼの活性がまったく失われていることは、注目すべきである。このことは、EZH2が骨髄悪性腫瘍に対する腫瘍抑制因子として機能していることを示唆している。

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