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エピジェネティクス:ヌクレオソームの動態によって転写エンハンサーが定まる

Nature Genetics 42, 4 doi: 10.1038/ng.545

クロマチンは真核生物の遺伝子発現調節において中心的な役割を果たす。本論文では、エピジェネティックに刻印されたヌクレオソームのゲノムワイドマッピングを行い、ヌクレオソームの位置を転写開始部位近傍およびエンハンサーなどの遠位調節配列の両方について求めた。その結果、前立腺がんの細胞ではアンドロゲン受容体が主としてエンハンサー領域に結合するが、アンドロゲン刺激によって、ヌクレオソームが消失することを見つけた。そのヌクレオソームはアンドロゲン受容体結合部位に存在し、エピジェネティックに刻印されたヌクレオソーム対に両側を挟まれていたものである。そこで、このようなヌクレオソーム対の動態をもとに新たな定量モデルを構築し、アンドロゲン受容体やFOXA1をはじめとする、アンドロゲン刺激にすぐさま応答する調節因子が結合する領域を同定した。さらに重要なことに、これらの因子とは別の、長期にわたるアンドロゲン刺激後に出現する、OCT1やNKX3-1といった転写因子の、これまで明らかになっていなかった結合部位も、このモデルによって正確に予測できた。したがって、エンハンサー構造についての定量モデルは、特定の刺激に対する細胞応答にかかわる、転写因子の実体を推測する強力な予測法となる。

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