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神経疾患:ミトコンドリアのプロテアーゼ遺伝子AFG3L2の変異は優性遺伝性小脳失調症SCA28を引き起こす

Nature Genetics 42, 4 doi: 10.1038/ng.544

常染色体優性脊髄小脳失調症(SCA)は、プルキンエ細胞の変性が主な原因である小脳機能不全を特徴とする神経疾患であるが、その遺伝的要因は多様である。本論文では、AFG3L2の変異によって脊髄小脳失調症28型(SCA28)が発症することを示す。AFG3L2は、劣性痙性対麻痺の原因となるパラプレジンとともに、ミトコンドリアのプロテオームの維持に関与する、生物種間でよく保存されたm-AAAメタロプロテアーゼ複合体を構成している。今回、血縁関係のないSCA患者の5つの家系において、ヘテロ接合性のミスセンス突然変異を同定し、AFG3L2がヒト小脳のプルキンエ細胞で高度かつ特異的に発現していることを見いだした。m-AAAメタロプロテアーゼ複合体が欠損した酵母細胞において、ヒトの変異型AFG3L2のホモ複合体を発現させると、細胞呼吸の低下、プロテアーゼの機能低下、呼吸鎖を構成する複合体?の活性低下が見られた。相同性をもとにした構造予測から、この変異がAFG3L2と基質との相互作用に影響する可能性が示唆された。今回の研究成果によって、AFG3L2が優性神経変性疾患の新たな原因遺伝子であり、ミトコンドリアタンパク質の品質管理機構の構成因子としてヒト小脳の神経変性が起こらないようにしているという、今まで知られていなかったAFG3L2の役割が明らかになった。

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