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がん:Skp2は、Rb1が欠失し異常増殖する細胞の生存や、Rb1+/−マウスの腫瘍形成に必須である

Nature Genetics 42, 1 doi: 10.1038/ng.498

網膜芽細胞腫遺伝子Rb1がヘテロ接合性である場合には、Rb1の影響を受けやすい組織で腫瘍が形成され、もう1つの正常に機能している対立遺伝子は自然発生的に失われる。網膜芽細胞腫タンパク質(pRb)の標的であることがこれまでに明らかになっているタンパク質を不活性化すると、Rb1+/−マウスにおける腫瘍形成が部分的に阻害される。本論文では、pRbの標的タンパク質の1つ、Skp2の不活性化によって、Rb1+/−マウスでの自然発生的な腫瘍形成が完全に回避されることを報告する。メラニン細胞刺激ホルモン産生細胞のRb1を欠失させ、Skp2を不活性化すると、脳下垂体中葉全体が存在しなくなる。このとき、Skp2の不活性化によって、Rb1欠失型メラニン細胞刺激ホルモン産生細胞の異常増殖は妨げられることはないが、そのアポトーシス細胞死が誘導される。さらに、p27T187AノックインマウスではT187におけるp27のリン酸化が起こらない。このリン酸化の喪失はSkp2ノックアウトによる効果と同じであり、このことから、SCFSkp2型ユビキチンリガーゼによるp27のユビキチン化こそが、この条件下においてSkp2が腫瘍形成に重要な役割を果たす原因となっている機序であることが判明した。ヒトのRB1欠失型網膜芽細胞腫細胞も、Skp2のノックダウンによって、アポトーシスを起こす。また、p27、特にp27T187A変異型のp27が異所的に発現するとアポトーシスが誘導される。上記の結果は、Rb1の影響を受けやすい細胞がRb1を欠失している場合には、Skp2が重要なサバイバル遺伝子となることを明らかにするものである。

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