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白血病幹細胞:Alox5遺伝子の欠損によって白血病幹細胞が障害を受け、慢性骨髄性白血病の発症が抑えられる

Nature Genetics 41, 7 doi: 10.1038/ng.389

がん幹細胞を標的とする治療法が、がんの治癒には必須であるとされているが、これを裏付ける証拠は限られている。そして、がん治療において標的となりうる、がん幹細胞に特異的な遺伝子は、ほとんど同定されていない。今回、アラキドン酸5-リポキシゲナーゼ(5-LO)遺伝子(Alox5)が、BCR-ABL誘導型慢性骨髄性白血病(CML)における白血病幹細胞(LSC)の決定的に重要な制御因子であることを確認したので報告する。Alox5を欠失したマウスでは、BCR-ABLに依存したCMLの発症がみられなかった。Alox5の欠失によって、正常な造血幹細胞(HSC)の機能は損なわれなかったが、LSCの機能は損なわれていた。すなわち欠失マウスでは、long-term LSC(LT-LSC、緩徐の増殖能を示すLSC)の分化、細胞分裂、持続的生存が影響を受けるために、LSCは枯死してしまい、CMLを発症することはない。CMLモデルマウスに5-LO阻害剤を投与した場合にも同様で、この薬剤はLT-LSCに作用してその働きを封じた。以上の結果は、がん幹細胞に特異的な標的遺伝子が存在し、その欠失によってがん幹細胞の機能が完全に妨げられることを示すものである。

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