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マイクロRNA:ヒトのがんにおけるTARBP2の変異がマイクロRNAのプロセシングとDICER1の機能を障害している

Nature Genetics 41, 3 doi: 10.1038/ng.317

マイクロRNA(miRNA)は、メッセンジャーRNA(mRNA)転写産物を標的とすることにより遺伝子発現を調節する小さな非コードRNAである。最近、ヒトのがんのmiRNA発現プロファイルは、miRNA全体の低下によって特徴付けられることがわかった。この観察結果の説明として、miRNAの転写後調節の障害、CpGアイランドプロモーターの過剰メチル化に伴う転写抑制、がん原因子によるmiRNAの転写抑制などがあげられている。別の可能性としてmiRNAのプロセシング経路にかかわる酵素やコファクター自身が、遺伝的な障害の対象となり、細胞の形質転換をさらに助長していることがあげられる。しかし、これらのタンパク質をコードする遺伝子の機能欠失遺伝的変異はこれまで報告されていない。本研究では、マイクロサテライト不安定性をともなう自然発生がんおよび家族性がんにおいて、DICER1複合体に不可欠の成分をコードしているTARBP2(TAR RNA結合タンパク質2)が短縮している変異を同定した。TARBP2のフレームシフト変異があると、TRBPタンパク質が減少し、miRNAのプロセシングに欠陥が生じる。欠失細胞にTRBPを再導入すると、miRNAが十分に産生され、腫瘍の増殖を抑制した。最も重要なことは、TRBPの障害はDICER1タンパク質の不安定化に関与していることである。これらの結果は、ヒトのがんのあるサブセットにおいて、成熟したmiRNAの発現が減少しているという観察結果の1つの説明となる。

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