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iPS細胞:組織およびがん特異的なCpG島岸の差次的メチル化によってヒトの誘導多能性幹細胞、胚性幹細胞および線維芽細胞が区別される

Nature Genetics 41, 12 doi: 10.1038/ng.471

誘導多能性幹(iPS)細胞はエピジェネティックな再プログラム化によって作出されるが、そのDNAメチル化パターンは今のところゲノムワイドな規模では解析されていない。今回、9つのヒトiPS細胞株を、それが由来する親線維芽細胞と比較した場合、シトシン-リン酸-グアニン(CpG)島岸の大幅な過剰メチル化および低メチル化がみられた。差次的メチル化領域(DMR)については、再プログラム化された細胞のDMR(R-DMRと記す)は、組織特異的DMR(T-DMR、2.6倍、P < 10−4)や、がん特異的DMR(C-DMR、3.6倍、P < 10−4)と有意に多くの重なりがみられた。特に、iPS細胞が線維芽細胞から作出される場合でさえも、そのR-DMRによって、正常な脳細胞、肝細胞、脾細胞間や、大腸がん細胞と正常大腸細胞間を区別することができる。したがって、多くのDMRが、組織分化、エピジェネティックな再プログラム化およびがんに大きく関与している。我々は、低メチル化R-DMRは過剰メチル化C-DMRやbivalentなクロマチン修飾との重なりがみられたこと、および、過剰メチル化R-DMRは低メチル化C-DMRやbivalent修飾を受けていない領域との重なりがみられたことから、iPS細胞とがんにおいてエピジネティックな再プログラム化には2つの機構が存在することが示唆される。

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