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免疫不全と造血系細胞分化:ヒトのアデニル酸キナーゼの欠損は感音性難聴にともなう高度の造血障害の原因となる

Nature Genetics 41, 1 doi: 10.1038/ng.278

細網異形成症(reticular dysgenesis)は、ヒトの重症複合免疫不全症(severe combined immunodeficiency:SCID)の常染色体劣性の症型の1つで、骨髄球系の分化の早期停止とリンパ球系の成熟不全を特徴とする。さらに、この疾患の新生児には両側性の難聴がみられる。本論文では、細網異形成症の患者7名のアデニル酸キナーゼ遺伝子(AK2)の両対立遺伝子に突然変異を同定したことを報告する。これらの突然変異によって、AK2タンパク質の発現量はまったくないか、大きく減少していた。次に、細網異形成症患者の骨髄細胞内でのAK2発現を回復させると、好中球の分化停止が克服されることを明らかにした。このことは、AK2が特定の造血系細胞の発生に特異的に必要であることを明確に示している。最後に、AK2が内耳の血管条領域に特異的に発現していることを証明した。この事実は、上記の患者にみられる感音性難聴を説明するものである。今回の研究結果によって、造血系細胞の分化制御およびヒトの最も重篤な免疫不全症候群のひとつに関係している、新たなメカニズムが同定された。

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