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脂質:16のヨーロッパ系集団コホートにおいて脂質濃度と冠動脈心疾患リスクに影響する座位

Nature Genetics 41, 1 doi: 10.1038/ng.269

最近、脂質に関するゲノムワイド関連解析(GWA)が、糖尿病をはじめとする別の表現型(疾患)との関連の確認されたコホートサンプルに対して行われている。本論文では、総コレステロール(TC)、低比重リポタンパク質(LDL)コレステロール、高比重リポタンパク質(HDL)、トリグリセリドに影響する座位についてのGWAの結果を初めて報告する。これらの座位は、16の集団コホートから無作為に選ばれ、おもにイルミナ(Illumina)社のHumanHap300-Duoを用いて遺伝子型決定された。今回の解析で対象にしているのは、18歳から104歳の総数17,797-22,562人で、北欧諸国から南欧諸国にかけて居住している。解析の結果、血清脂質レベルとの有意な関連をゲノム全域において示す22の座位が明らかになった(P<5×10−8)。そのうちの16は、これまでのGWAによってすでに同定されている。今回のコホートサンプルで新たに同定された座位は、ABCG5(TC、P=1.5×10−11、LDL、P=2.6×10−10)、TMEM57(TC、P=5.4×10−10)、CTCF-PRMT8領域(HDL、P=8.3×10−16)、DNAH11(LDL、P=6.1×10−9)、FADS3-FADS2(TC、P=1.5×10−10、LDL、P=4.4×10−13)、MADD-FOLH1領域(HDL、P=6×10−11)である。ここで3つの座位では、その脂質レベルへの影響が男女別で有意に異なっていた。脂質座位から求めた遺伝的リスクスコアは、最大で4.8%の脂質の差異を説明し、また、内膜中膜複合体厚の増大(P=0.001)や冠動脈心疾患発症率(P=0.04)との関連も示した。この遺伝的リスクスコアによって、従来のリスク因子よりも、脂質異常症ハイリスク患者のスクリーニングの改善が望める。

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