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大量シーケンサー:大規模塩基配列決定による腸チフス菌のゲノム多型と進化についての洞察

Nature Genetics 40, 8 doi: 10.1038/ng.195

チフス様症状を起こし、ヒトだけに感染する病原性細菌である腸チフス菌は、遺伝的多型が少ない。我々は、19の腸チフス分離株に対して、454(ロッシュ社)とソレクサ(イルミナ社)の2つのシーケンサーを用いて、全ゲノム配列決定を行った。これらの分離株はすでに配列決定が行われているCT18とTy2を含んでおり、系統樹の中で主要なノードを代表するものの中から選択された。比較解析の結果、純化淘汰、抗原の多様性、あるいは分離株間の組換えの証拠はほとんど得られなかった。むしろ、サルモネラ菌集団の進化は、菌が効果を及ぼす小集団サイズに一致して、継続的に起こる遺伝子機能の欠失によって特徴づけられているようにみえる。免疫選択によって活発化される抗原の多様性が欠如しているという証拠は、腸チフスが高い頻度で抗生物質耐性変異を起こす適応淘汰を示すこととは対照的である。今回観察された遺伝的な隔離と浮動のパターンは、腸チフスの無症候性キャリアがこの病原菌の主たる感染源として鍵になる役割を果たしているという、これまでに提唱されていた説と一致しており、キャリアを同定し治療することの必要性に対して光をあてるものである。

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