本論文では、新たに同定された常染色体優性の神経繊維腫症1型様のヒト疾患で、生殖細胞系列でのSPRED1の機能喪失性変異が認められることを報告する。SPRED1はSPROUTY/SPREDファミリーに属するタンパク質で、RAS-RAFの相互作用やマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル伝達の負の調節因子として機能する。この疾患の臨床徴候は、神経繊維腫症1型の徴候に類似しており、多数のカフェオレ斑、腋窩部における雀卵斑様色素斑および大頭蓋症である。患者においては生殖細胞系列でのSPRED1の変異に加えて、カフェオレ斑のメラノサイトでは、野生型SPRED1対立遺伝子でも新たな体細胞変異の獲得が起こっていた。このことは、この症候群では、SPRED1の完全な不活化がカフェオレ斑の発生に必要であることを示している。また、この疾患は、RAS-MAPK経路の主要な構成要素をコードする遺伝子の変異によって引き起こされ、最近特徴が明らかになった表現型の重複する症候群のグループにも属している。我々の知る限り、本研究はヒトの疾患でSPRY(SPROUTY)/SPREDファミリーの遺伝子の変異が見つかった最初の報告である。
目次へ戻る