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X染色体:線虫C. elegansの遺伝子量補償装置が転写開始部位へ局在化することによるX染色体発現抑制

Nature Genetics 39, 3 doi: 10.1038/ng1983

性決定が染色体にもとづいておこなわれる生物においては、X連鎖遺伝子の発現が雄と雌の間でうまく等量化されない場合には通常、死に至る。線虫C. elegansでは、XX雌雄同体の各X染色体からの転写活性はともに、雄のXO染色体の半分に抑えられている。本論文では、線虫の遺伝子量補償複合体(DCC)の2つの構成分子である、コンデンシン(condensin)のホモログ(相同タンパク質)DPY-27とZnフィンガータンパク質SDC-3が結合する領域を位置決定した。その結果DCCが、その周囲と比べて、集中して結合する部位がX染色体上に存在することが明らかになった。集中的な結合部位には10 bpのDNAモチーフからなる特徴的なクラスターが存在したが、その周囲の領域にはこのDNAモチーフがみられなかった。このことから、DCCがDNAモチーフ部位に動員され、染色体に広がっていくメカニズムが示唆された。DCCは遺伝子の上流領域に選択的に結合する。これは、DCCが転写の開始を調節(抑制)し、その効果がポリメラーゼと連動して染色体上に広がることを示唆するものである。DDCが、高度な転写活性を示す遺伝子の上流にさらに強く結合することは、特定の遺伝子座においてDCC活性が調節されていることを示す。本研究成果は、染色体の高次構造の変化に関与するタンパク質がどのようにして個々の遺伝子座における転写を調節しうるかを理解するのに有用である。

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