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クロマチン:哺乳類の減数分裂期の性染色体不活性化における染色体全体にわたったヌクレオソームの置換とH3.3の取り込み

Nature Genetics 39, 2 doi: 10.1038/ng1949

哺乳類の雄における第1減数分裂前期は、XY体とよばれる別々のクロマチンドメインが形成されることを特徴とする。このドメインでは、X染色体およびY染色体は部分的に対合しており、転写がサイレンシングされる。この過程を減数分裂期染色体不活性化(meiotic sex-chromosome inactivation;MSCI)という。同じように、太糸(パキテン)期に存在する常染色体のクロマチンもサイレンシングされる。これは、対合していないクロマチンの減数分裂期サイレンシング(meiotic silencing of unsynapsed chromatin;MSUC)という。MSCIとMSUCは両方とも、ATRキナーゼが調節するヒストンH2A.Xのリン酸化に依存していること、また転写を抑制する(抑制性)H3 Lys9ジメチル化を引き起こすことが知られているが、サイレンシングの根本的な機構についてはほとんどわかっていない。本論文では、MSCIおよびMSUCに合わせてそのすぐあとに、対合していないクロマチン内部で広範囲のヌクレオソームの置換が開始されることを明らかにする。ヌクレオソームでH3が追い出されると、H3.3変異体の取り込みが盛んに行われるようになる。この取り込みは、現在までおもに転写活性に関連があるとされてきた。ヌクレオソームの置換によって、ヒストンの追い出しと、その後の特異的な修飾の選択的取り込みが起こるのである。したがってこの過程は、おそらく哺乳類の雄の生殖系列細胞の遺伝子サイレンシングに必要とされる、性クロマチンのエピジェネティックな再プログラミングのための手段となる。

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