Technical Report

小さな細胞集団に適用可能なクロマチン免疫沈降法プロトコールによる、初期胚のエピジェネティックな構造変化の特性解析

Nature Genetics 38, 7 doi: 10.1038/ng1820

クロマチン免疫沈降(ChIP)は、タンパク質のゲノム上における配置やその修飾を明らかにするが、一定数以上の細胞(理想的には107個以上)が必要である。本論文では、キャリアとなるクロマチンとPCRを用いておこなう「キャリア」ChIP(CChIP)について述べる。CChIPは、わずか100個程度の細胞で解析を可能にするプロトコールである。我々は、マウスの胚性幹細胞(ES細胞)、および培養胚盤胞の内部細胞塊(ICM)や栄養外胚葉における重要な調節遺伝子であるNanogPou5f1Oct4としても知られている)、Cdx2などのヒストン修飾をCChIPによって解析した。転写を活性化および不活性化する修飾(それぞれH4アセチル化とH3K9メチル化)は、予想通り、プロモーターが活性型であるか、不活性型であるかの指標となっており、しかも、CChIP(ES細胞1000個)と従来法であるChIP(ES細胞5×107個)とで得られる値の間には、密な相関関係が見られた。ICMとES細胞の両方における転写が抑制されている遺伝子(Cdx2Cfc1HhexNkxとしても知られるNkx2-2)についての実験結果から、転写を抑制する標識の度合いがES細胞の場合には弱くなっていることが明らかになった。このことは転写を抑制する因子の一部が、細胞が培養に順化したことによって緩和した状態となっていることを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度