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タンパク質発現量に見られる、その自然界における存在比によって生じるノイズ

Nature Genetics 38, 6 doi: 10.1038/ng1807

遺伝子発現におけるノイズは、転写、翻訳、クロマチン再構築、経路特異的調節といった複数の局面で生み出される。個々のプロモーターを詳しく調べると、異なるノイズ発生源の存在が示唆され、このことから、遺伝子と条件の数が増えたときに一般的に見られる傾向が存在するだろうかという問題が提起される。我々は、11種類の実験条件下で増殖させた出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの細胞を使って、43種類のタンパク質の発現レベルの違いを調べた。遺伝子の種類と培養条件にかかわらず、タンパク質の発現量のばらつきは、ほぼその平均に比例していた。具体的には、定常状態と、状態のわずかな変化に対する一過性の応答期間において、おなじスケーリングが観察された。理論的な解析から、このようなスケーリングが、mRNA分子の無作為な「誕生と死」、もしくはプロモーターの変動から生じるmRNAコピー数の変動を表すことが示唆された。例えばストレス関連遺伝子における高いノイズ、あるいはプロテアソーム遺伝子における低いノイズなどの、同時発現される遺伝子が示す一般的な傾向からの逸脱は、経路特異的調節因子の変動、もしくはこれらを構成する遺伝子プロモーターの活性化パターンの違いを示すと考えられる。

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