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陰イオン性トリプシノーゲン(PRSS2)の分解感受性変異体は慢性膵炎の発症を防ぐ

Nature Genetics 38, 6 doi: 10.1038/ng1797

慢性膵炎は、膵臓の一般的な炎症性疾患である。陽イオン性トリプシノーゲン(PRSS1)や膵分泌性トリプシン抑制因子(SPINK1)をコードする遺伝子の変異は、慢性膵炎に関連している。変異PRSS1によるタンパク質分解活性の増加は、慢性膵炎のリスクを高めるので、陰イオン性トリプシノーゲン(PRSS2)をコードする遺伝子の変異も、この疾患を罹患しやすくさせる可能性がある。我々は、慢性膵炎の患者と対照群においてPRSS2を解析し、対照群においてはコドン191の変異(G191R)が多く認められるという驚くべき結果を見いだした。G191Rの変異は、対照群6459人中220人(3.4%)に認められたが、患者では2466人中32人(1.3%)に認められるのみであった(オッズ比、0.37。P=1.1×10-8)。精製した組換え型G191Rタンパク質は、エンテロキナーゼあるいはトリプシンによる活性化の場合に、トリプシンによって切断される部位が新しく導入されたため、トリプシン活性を完全に失い、また、自己触媒作用による分解に高感受性となることが示された。つまり、PRSS2のG191R変異体は、膵臓内のトリプシン活性を弱め、その結果、慢性膵炎の発症を防いでいる。

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