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膵β細胞におけるインスリンやIGF-I抵抗性は全体として顕性糖尿病を引き起こす

Nature Genetics 38, 5 doi: 10.1038/ng1787

適切なβ細胞量はグルコース恒常性の維持にきわめて重要である。β細胞の増殖と機能の調節には、インスリンとIGF-1の両方が重要である。これらのホルモンの役割を直接明らかにするために、我々はβ細胞においてのみインスリンとIGF-1の両方の受容体を機能的に欠損するマウスモデル(βDKO)を作製した。これらのホルモンは作用機構が重複しており、共通の下流タンパク質を活性化する。特筆すべきは、正常な膵島の細胞量と構造をもって生まれたβDKOマウスは、出生後3週間で糖尿病を発症したことである。一方、1つの受容体のみを欠損する変異マウスでは、軽度の表現型が観察された。2週齢の正常血糖βDKOマウスは、β細胞量の減少、リン酸化Aktと転写因子MafAの発現低下、膵島におけるアポトーシスの増加、および重度のβ細胞機能障害を示した。複合ノックアウトマウスの解析から、β細胞量を調節するインスリンシグナル伝達の主要な役割が示された。つまり、これらのデータは、インスリンやIGF-I依存的な経路はβ細胞の発生には重要ではないが、β細胞でこれらのホルモンの作用が欠損すると糖尿病が引き起こされるということを支持する有力な遺伝的証拠を示すものである。我々は、β細胞のインスリンとIGF-Iシグナル伝達の改善による2型糖尿病に有効である可能性を提示する。

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