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高い突然変異率がヒトY染色体間の高度なゲノム構造多型を促進してきた

Nature Genetics 38, 4 doi: 10.1038/ng1754

ヒトゲノム構造の多型が数多く列挙されるようになってきたが、多型の原因となる変化がどのように生じるかについては、大部分は明らかにされていないままである。ヒトのY染色体はクローン性の遺伝で受け継がれるため、確固とした、世界規模の系統樹におけるその詳細な関係を理解することが可能になっている。この系統樹の全域にわたってゲノム構造の変化を検討すれば、その原因となる突然変異の発生率を研究することが可能になる。我々はこの系統樹を構成する47の各分枝から1つのY染色体を選び、大規模な構造の違いを探し出した。4つの染色体領域が、多数の大規模な突然変異によって生じる高度な構造変異を示した。研究対象の染色体を含む系統樹内では、末端部のYqへテロクロマチンは長さが12回以上変化し、TSPY遺伝子の並びの長さは23回以上変化していた。3.6 MbのIR3/IR3領域は12回以上逆位を生じており、AZFc領域では20回以上の遺伝子再編成が起きていた。この系統樹のすべての分枝を含む合計時間を決定し(130万年、もしくは52,000世代)、これらの突然変異数を突然変異率の下限値、すなわち父から息子へのY染色体伝達1回あたりの大規模突然変異数に換算したところ、それぞれの値は≥2.3×10-4、≥4.4×10-4、≥2.3×10-4、≥3.8×10-4であった。このように、突然変異率が高いことでヒトY染色体間の高度な構造的差異がもたらされている。一方、Y連鎖遺伝子のコピー数に関するわずかな違いが見いだされた。これは、選択的制約の可能性を提起している。

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