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遺伝子のSNPはヒトの耳垢型の決定因子である

Nature Genetics 38, 3 doi: 10.1038/ng1733

ヒトの耳垢には湿型と乾型がある。乾型耳垢は東アジアの集団において高頻度に観察されるが、湿型耳垢はその他の集団で主に見られる。本論文では、ABCC11遺伝子の538番目のGがAに変化したSNP[538G→A(rs17822931)]が、耳垢の型を決定していることを示す。遺伝子型が「AA」であれば乾型耳垢に該当し、「GA」および「GG」は湿型耳垢である。また、アジア系の少数の個体には、ABCC11遺伝子の29番エキソンに27bpの欠失も見つかった。機能解析から、「A」対立遺伝子をもつ細胞は、「G」対立遺伝子であるものに比べて、cGMPを排出する活性が低いことが明らかになった。「A」対立遺伝子の頻度は、北から南へおよび東から西へ下降する地理的勾配を示す。すなわち、世界的に見て、乾型対立遺伝子をもつ頻度は中国人と韓国人において最も高く、共通の乾型ハプロタイプがさまざまな民族集団の間に保持されている。これらの結果は、「A」対立遺伝子が北東アジアで出現し、その後世界中に広がったことを示唆している。この538G→AというSNPは、目に見える遺伝形質を決定しているDNA多型の最初の例である。

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