Article

STAB1によって転写活性を示すクロマチンが密にループ構造を形成し小さくまとめられることで、サイトカイン遺伝子群は協調的に発現する

Nature Genetics 38, 11 doi: 10.1038/ng1913

SATB1(special AT-rich sequence binding protein 1)は、特定のDNA配列をつなぎ止めるとともに、クロマチン再構成(リモデリング)因子を集めることにより、細胞型特異的な核内DNA構造を構築し、遺伝子発現を制御している。我々は、Il5Il4Il13の協調的な発現調節におけるSATB1の役割を詳細に調べた。Il5Il4Il13は、マウスの11番染色体に存在する200 kb長のヘルパーT細胞サブセット2(TH2)特異的サイトカイン遺伝子座に位置する。本論文では、TH2細胞が活性化されると、SATB1の発現が速やかに誘導され、転写活性のある特異なクロマチン構造がこのサイトカイン遺伝子座に形成されることを示す。この構造では、クロマチンは多数の短いループ構造へと折りたたまれており、すべてのループ構造はその基底部分でSATB1につなぎ止められていた。さらに、ヒストンH3はLys9およびLys14でアセチル化されており、TH2細胞特異的因子であるGATA3、STAT6、c-Maf 、クロマチン再構成酵素のBrg1、RNAポリメラーゼIIはすべてがこの200 kb領域内に結合していた。TH2サイトカイン遺伝子座においては、活性化される以前にGATA3やSTAT6がすでに結合しており、一部はループ構造を形成しているが、こういった状態だけではサイトカインの遺伝子発現を誘導するには不十分である。TH2細胞が活性化される際には、SATB1が、200 kbのサイトカイン遺伝子領域においてクロマチンを密なループ構造に凝縮するとともに、Il4Il5Il13およびc-Maf の発現を誘導する必要性がRNA干渉により明らかになった。したがって、SATB1は、TH2細胞が活性化されると形成される、転写活性をもつクロマチンがとる今までに同定されていない高次構造を決定する必須因子である。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度