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ラミンB1の重複は常染色体優性白質ジストロフィーの病因となる

Nature Genetics 38, 10 doi: 10.1038/ng1872

成人発症型常染色体優性白質ジストロフィー(ADLD)は、中枢神経系における対称的な広範囲のミエリン消失を特徴とする緩徐進行型神経疾患で、慢性進行型多発性硬化症とよく似た病変を呈する。本研究では、ADLDの病因となるゲノム重複を同定したので報告する。このような重複をもつヒトは核ラミナタンパク質であるラミンB1タンパク質の遺伝子の余分なコピーをもち、そのADLD患者由来の脳組織ではラミンB1の遺伝子量が増大している。ショウジョウバエDrosophila melanogasterにおけるラミンB1の発現の増加は、退行性の病変を生じさせた。さらに、培養細胞においてこのタンパク質を過剰発現させると、核の形態異常が出現した。本疾患は、ラミンB1をコードする遺伝子に生じた突然変異が病因となると考えることのできる最初のヒトの疾患である。自己免疫疾患の患者にラミンBの抗体が見つかり、この抗体は多発性硬化症患者の脳由来のプラーク(脱髄斑)に対するモノクローナル抗体によって認識される抗原でもある。本研究成果は、ラミンBが多発性硬化症で起きている自己免疫性の攻撃に関連しているのではないかと可能性を提起するものである。

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