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酵母代謝エピスタシスのモジュール

Nature Genetics 37, 1 doi: 10.1038/ng1489

ある変異によって起こった表現型に対して別の変異の影響の結果明らかになったエピスタシスの関係(遺伝子間の相互作用)は、複雑な生物学的ネットワークの機能的な機構を解明するのに役立つ可能性がある。本論文では、フラックスバランス解析法の手法を使って、酵母Saccharomyces cerevisiaeの890の代謝関連遺伝子すべての、単一あるいは二重ノックアウトがもたらす増殖表現型をコンピュータ解析することにより、システムレベルでのエピスタシスの関係を調べた。エピスタシスの新しい尺度を用いることにより、エピスタシス効果には異なる3種類が存在し、遺伝子のペアは3種類の関係、すなわち緩和、増悪、無関係の3つに分かれることがわかった。引き続いて得られるエピスタシス・相互作用ネットワークは、相互の関係を「白黒的」に(すなわち、エピスタシスを単なる増悪あるいは緩和のどちらかの関係として)表すことにより、機能を加えたモジュールで階層分類的に構成されうることを見いだした。こうした特性は、エピスタシスの概念を1つの遺伝子から機能的ユニットへと広げるものであり、機能的モジュール内の相互作用ではなく、機能的モジュール間の相互作用に着目した、生物学的モジュールの新しい定義をもたらすものである。本論文のアプローチは、表現型にもとづいたエピスタシスの測定から、遺伝子の機能的モジュールを推測するうえで用いることが可能である。

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