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ナンセンス変異を介するmRNAの分解を見るマイクロアレイ解析によってヒト前立腺癌においてEPHB2遺伝子に変異があることがわかった

Nature Genetics 36, 9 doi: 10.1038/ng1408

古典的な癌遺伝学的手法を用いた場合、固形癌において癌抑制遺伝子を同定することは困難であり時間がかかる。我々は、ナンセンス突然変異と正常の対立遺伝子の欠失により、両対立遺伝子が不活性化されている遺伝子をゲノム全体から検出する目的で、ナンセンス変異を介するmRNAの分解を見るマイクロアレイ法と、対立遺伝子を用いた比較ゲノムハイブリダイゼーション法を併用して用いた。この方法により、これまで知られていなかったチロシンキナーゼ受容体EPHB2の新たな変異を同定することができた。脳転移腫瘍由来の前立腺癌の細胞株DU145には、EPHB2の短縮型変異と、もう一方の対立遺伝子における欠失が存在する。臨床における前立腺癌サンプルでは、このほかにフレームシフト変異、スプライス部位変異、ミスセンス変異、ナンセンス変異が見つかっている。機能するEphB2タンパク質をもたないDU145細胞株に、正常型のEPHB2遺伝子を導入(トランスフェクション)するとクローン性の増殖が抑えられる。EphB2が細胞の遊走と正常の組織の構造維持に必須の役割を担っているかもしれないことを示す研究と、今回の結果を合わせて考えると、我々の発見はEPHB2の変異による不活性化が前立腺癌の進展・転移に重要な役割を果たしていることを示唆するものである。

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