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ファンコニ貧血相補群BのX連鎖性遺伝

Nature Genetics 36, 11 doi: 10.1038/ng1458

ファンコニ貧血(Fanconi anemia;FA)は、多様な臨床症状、DNA架橋剤に対する高感受性、染色体不安定性、癌への高感受性を特徴とする常染色体劣性遺伝疾患である。ファンコニ貧血には少なくとも11の相補群(A、B、C、D1、D2、E、F、G,I、J、L)があり、そのうち8群(A, C, D1, D2, E, F, G, L)において変異が生じている遺伝子が同定されている。BRCA2遺伝子が相補群Bの原因遺伝子であるとされたが、決定的な証拠は得られていない。本論文では、ファンコニ貧血相補群Bの患者における異常タンパク質が、FANCD2のモノユビキチン化を担う核内タンパク質である「コア複合体」の必須構成要素であることを示す。FANCD2のモノユビキチン化はDNA損傷に対する応答経路における重要な事象で、ファンコニ貧血およびBRCAに関連がある。意外なことに、このタンパク質をコードしている遺伝子FANCBはXp22.31に局在しており、X染色体不活性化の対象となる。X染色体連鎖性遺伝は、ファンコニ貧血相補群Bの罹患家族の遺伝カウンセリングに重大な影響を及ぼす。FANCBがヒトゲノムにおいて単一の活性型コピーとして存在し、ファンコニ貧血-BRCA経路の機能に不可欠である事実は、この遺伝子が変異の影響を受けやすく、細胞がゲノムの安定性を維持する機構の構成遺伝子であることを示唆している。

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