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哺乳類のミトコンドリアtRNAにおける補填的進化のメカニズムとその収束

Nature Genetics 36, 11 doi: 10.1038/ng1451

タンパク質とRNAの分子としての機能は各部位間の複雑なエピスタシス(上位性)相互作用によって決まる。したがって、ある突然変異が及ぼす有害効果を、もう1つの部位の補填的な置換により抑圧することが可能である。我々は、ミトコンドリア遺伝子がコードするtRNAに見られるヒトの86の病因性突然変異のリストを、その哺乳類オーソログの配列に照らし合わせたところ、そのうち52の病因性突然変異がヒト以外の一種または数種の哺乳類の正常tRNAに存在することがわかった。そして、4つあるtRNAステム構造のうち1つのワトソ-クリック塩基対を破壊する32の病因性突然変異を補填する機序が、少なくとも5種類あることを見いだした。すなわち、損なわれたワトソン-クリック塩基対相互作用の修復(25例)、別の塩基対の増強(4例)、新たな塩基対の生成(8例)、破壊されたステム構造における複数の相互作用の変更(11例)、ループとステム構造間の相互作用にともなう変更(3例)である。病因性突然変異とそれを補填する置換は、遺伝子系譜の中に間断なく固定され、しかも多くの場合、その補填的相互作用はいろいろなクレードにおいて収束進化する。哺乳類tRNAの進化の中で生じた全ヌクレオチド置換の最低10%、さらにことによると50%もの置換がこのような相互作用に関与している。この事実はtRNAの進化が、強力なエピスタシス効果を示す適応に従って進行していることを示唆している。

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