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オーロラAキナーゼによるリン酸化はMdm2を介したp53タンパク質の不安定化と抑制を誘導する

Nature Genetics 36, 1 doi: 10.1038/ng1279

オーロラAキナーゼ(別名STK15、BTAK)はヒトの多くの癌で過剰発現している。オーロラAキナーゼを哺乳類で異所性に過剰発現させると、中心体の増幅や染色体の不安定化、癌細胞への形質転換といった、p53タンパク質の機能喪失型変異と同様の形質変化を誘起することが知られている。本論文では、オーロラAキナーゼがp53タンパク質の315番目のセリン残基(Ser315)をリン酸化し、その結果、Mdm2によるp53のユビキチン化および分解を誘導することを明らかにした。不活性型のオーロラAキナーゼまたはユビキチン化能を欠いたMdm2の存在下では、p53の分解は起こらなかった。また、オーロラAキナーゼによるp53の不安定化は、p53結合能をもたない変異型Mdm2の存在下や、RNA干渉によるMdm2遺伝子の抑制により回避することができた。一方、オーロラAキナーゼの発現を抑制するとp53のSer315のリン酸化は低減し、p53の安定化ならびにG2−M期における細胞周期の停止がみられた。オーロラAキナーゼを欠いた細胞では、シスプラチン誘導性のアポトーシスが起こりやすくなっているが、オーロラAキナーゼを発現させると、この反応は抑制された。また、正常型p53遺伝子を有する膀胱癌腫瘍で検討したところ、オーロラAキナーゼの発現の促進は、p53濃度の減少と相関していることが示された。以上の結果から、オーロラAキナーゼはp53経路の重要な調節因子であり、オーロラAキナーゼの過剰発現はp53分解をもたらし、その結果、細胞のチェックポイント経路を負に調節し、癌細胞への形質転換を促進することが明らかになった。

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