CHIEF EDITOR'S INTERVIEW

エネルギー研究の新しいフォーラム

Nature Energy 編集長
Nicky Dean

2016年4月に開催された Nature Café(多様なエネルギーを最大限に活用できる未来をめざして~蓄電池が切り開く次世代エネルギーと社会システム~)では、どのようにしてエネルギー研究に従事するさまざまな分野の研究者を集めるかについて、Nature Energy 編集長の Nicky Dean が見解を示しています。Nature Energy は、2016年1月に Nature 関連誌として創刊されたエキサイティングなジャーナルです。昨今、非常に活気にあふれているエネルギー研究について、また、多岐の分野にわたるエネルギー研究者間のコミュニケーションの促進に果たすNature Energy の役割について、Springer Nature のアソシエイトエディター Simon Pleasants が Nicky Dean にインタビューしました。

―― Nature Energy の使命とはどのようなものでしょうか?

Nicky: エネルギーという広大な研究分野に携わっているあらゆる関係者が、最新研究や課題について議論できる、先導的なフォーラムにしたいと考えています。どんな領域であっても、優れたエネルギー研究を紹介することはとても重要です。さまざまなエネルギー研究の知見に触れることで、システム全体をどのようにすれば適合させられるのか、また研究者たちがそうしたシステムを新しいアプローチでどのようにして具体化するのか、さらにはその影響について、しっかりと理解できるからです。

―― エネルギー分野の研究で特別な点は何でしょうか?

Nicky: とても幅が広いこと、そして、とても活気に満ちているということです。エネルギーは、大きくて複雑、そして多面性に富んだ研究対象です。このため、さまざまなアプローチや学術的な手段を用い、ありとあらゆる学問領域から、多種多様な課題に取り組んでいます。

さまざまな側面を融合した研究を知るのは、とても“クール”です。

Nature Energy ではさまざまな要素が互いに絡み合っており、掲載論文をヒントに、思いもかけず読者は、より分野横断的に融合した研究に着手するかもしれません。例えば、無機化学分野の研究が政府の政策に及ぼす影響について関心を寄せるきっかけになる可能性があります。あるいは、サハラ以南のアフリカや東南アジアの人々が抱える問題の現実的な解決には、先進国では考えられないようなアプローチによる太陽電池研究がどれほど重要であるかを考えるようになるかもしれません。こうしたさまざまな側面を融合した研究を知るのは、とても“クール”です。大局的見地から、先端研究を知ることはすばらしいことですからね。

―― Nature Energy に掲載される論文の専門科目は何でしょうか?

Nicky: 原則的には、どんなものでもかまいません。我々は、領域指向ではなく、題材指向から採択しようとしています。つまり、フォトニクスや材料科学、化学、そしてさまざまな生物学側面(例えば、微生物の作用や植物由来のバイオ燃料)からのアプローチにさえも注目しています。さらには、経済学、政策、行動科学、政治学、社会学、心理学も意識しています。このような多様性を反映し、Nature Energyの編集チームには、エレクトロニクス技術者、物理学者、物理化学者、電気化学者、経済学者が名を連ねています。すでにNature Energy には、こうした分野の論文がたくさん掲載されています。

―― エネルギー研究のコミュニティの反応はいかがでしたか?

Nicky: この分野の人々と話したところ、彼らは、Nature Energy をとても楽しみにしていて、その必要性を感じていました。そして、非常に喜んで迎えられています。Nature 関連誌の取り組みがエネルギー研究に高い透明性と質をもたらすからです。さらに、彼らの賛同を得ているのが、自然科学と社会科学の両方を対象としているジャーナルの方針です。自身の研究分野のコミュニティで討論するだけでなく、自分の研究とほかの分野の研究を結びつけ融合させる手段を見いだすことができるからです。例えば、政策は、実際に彼らの研究に影響を及ぼす可能性があります。直接的な関連はないように見えても、彼らにとって重要なことになるかもしれませんし、影響を及ぼしうるかもしれないのです。物理科学の分野からエネルギー問題に挑んでいる多くの人々も、気候変動、エネルギーアクセスやエネルギー開発などの課題に関心を抱いています。Nature Energy は、読者に、自身の研究分野の論文とともに、世界をリードする融合研究の学術論文を提供します。すべての分野を補完し、有益なものとなると考えています。

―― Nature Energy に掲載されるのはどのような論文でしょうか?

Nicky: Nature Energy では、重視すべき新しい概念の発展や技術的進歩を紹介するともに、エネルギー分野に携わっている幅広い読者が興味を示すような質の高い研究を求めています。掲載論文は、ごく基本的なものから、非常に応用的なものまで多岐にわたります。こうしたジャーナルの方針により、エネルギー分野のあらゆる論文が集まって、議題全体を明確にすることができます。それぞれの論文が、ありとあらゆる課題を網羅する必要はありません。我々が求めているのは、最も意義深い進歩をもたらすと思われる論文、つまり著者が取り組んでいるエネルギー関連する研究の中で課題を推し進めている論文です。

我々が求めているのは、最も意義深い進歩をもたらすと思われる論文、つまり著者が取り組んでいるエネルギー関連する研究の中で課題を推し進めている論文です。

―― Nature Energy に掲載するのにうってつけの研究分野で日本独自の強みはあるのでしょうか?

Nicky: 日本には、とてもすばらしい蓄電池研究施設があります。つくば市にある物質・材料研究機構が、蓄電池システムを研究し特性を評価するために、蓄電池基盤プラットフォームを設立したのです。現在、日本中から集まった研究者がこの施設を利用しています。これは実に驚くべきことです。同じことが、太陽光発電にも当てはまります。米国におけるサンショット・イニシアティブと似た大きな戦略があり、太陽電池分野の研究のアウトプットを増やして前進させようとしています。また日本では、水素技術の研究も数多く行われています。ハイブリッド自動車や水素燃料電池自動車に対する産業界の関心が高く、推進されているのです。日本の産業界では、研究者たちは、基礎研究を大量生産に適した技術にしようとしています。

―― 日本の研究者に伝えたいことはありますか?

Nicky: Nature Energy は、日本の研究に強い関心を抱いています。日本発の非常に優れた先導的な研究もあります。私たちは、そうした研究のよりどころとなり、世界に示したいと思っています。

(翻訳:内山英一、編集:田中明美)

プライバシーマーク制度